導電性試料表面のゼータ電位測定
概要 導電性試料を測定する際の注意点と、測定可否を判断する方法について紹介する。
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1. 導電性試料における課題

Helmholtz-Smoluchowski式を用いてゼータ電位を算出する際には、一次データである圧力差に対する流動電流または流動電位のプロットが良好な直線性を示すことが極めて重要である。しかし、導電性を有する試料では、試料内部にも電流経路が形成される場合がある。その結果、圧力差と流動電流または流動電位の直線性が損なわれ、正確な傾きの算出が困難となる。これにより、データの再現性や信頼性が大きく低下するという課題がある。
2. 導電性試料への対策
①dI/dPまたはdU/dP算出時の解析範囲の設定(以下、閾値と呼称)
圧力と流動電流または流動電位のグラフでは、高圧側ほど直線性が損なわれる傾向がある。一方、低圧側では比較的良好な直線性が維持される。そこで、直線性が良好な低圧側のデータのみを解析に用いるよう閾値を設定することで、dI/dPまたはdU/dPの算出精度を高め、データの再現性を向上させることができる。
②電解液濃度の増加
電解液濃度を高めると、電解液の電気抵抗が低下する。その結果、試料表面または試料内部を介した導電経路の影響を相対的に低減させることができるため、直線性が改善される場合がある。ただし、高濃度の電解液を用いると電気二重層が圧縮されるため、pHに対するゼータ電位変化の傾きが小さくなる点に留意が必要である。
このように、電解液濃度を高めることは測定の再現性や安定性を向上させる一方で、界面電荷の変化に対する応答感度は低下する。
3. 測定条件・結果および考察
pH5付近における圧力差と流動電流または流動電位の関係を図2に示す。電解液濃度が1 mMの場合、閾値を450 mbarに設定しても直線性は十分でなかった。一方、電解液濃度を10 mMに増加させると、直線性が向上した。
この直線性の違いが測定値のばらつきに与える影響を表1に示す。直線性が乏しい1 mM条件では、測定ごとのばらつき、すなわち標準偏差が大きかった。一方、電解液濃度を10 mMに上げて直線性を改善することで、標準偏差は約半分に低減し、より安定したデータが得られることが確認された。

4. まとめ
導電性を有する試料であっても、電解液濃度を増加させるなどの条件検討を行うことで、圧力差と流動電流または流動電位との関係の直線性が改善され、測定データの再現性が向上することが確認された。一方で、極めて高い導電性を有する試料では、これらの対策を講じても一次データの直線性が改善されず、測定不可となる場合もある。導電性試料の測定可否は、試料の電気抵抗値のみで一概に判断することは難しい。そのため、実際に試料を測定セルに設置し、電解液を通液したうえで、一次データの挙動を確認することが重要である。





