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人々の幸せにつながる界面科学の謎を追求したい

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人々の幸せにつながる界面科学の謎を追求したい

酒井俊郎 教授(信州大学工学部物質化学科)(左)・協和界面科学 亀井(右)

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酒井俊郎 教授(信州大学工学部物質化学科)
酒井教授が長年携わっているのが、「水と油を混ぜる、乳化」に関する研究です。水と油を乳化するには、界面活性剤などの乳化剤を用いるのが一般的ですが、酒井教授は乳化剤を用いずとも長期分散安定化させる技術を確立し、医薬品や化粧品、食品などの分野で応用できないかと日々研究を続けています。
当社では、その研究過程において高精度表面張力計などの装置を提供するほか、新たな装置の研究開発にも共同で取り組んでいます。

油と水を混ぜる、乳化に情熱を注ぐ半生

酒井教授

協和/亀井社長:酒井教授の研究分野についてご紹介をお願いいたします。

酒井教授:皆さんもご存じの通り、水と油は本来混ざらないものです。それを乳化剤で互いの表面張力を弱らせることにより、「安定」して分離しにくい状態を作り出すことができます。 

一方で、私は、乳化剤を用いずにコロイドが分散している状態、つまり、油と水のみでつくられたエマルションについて研究してきました。エマルションなどのコロイド分散系は「準安定」な状態であるため、コロイド分散系の分散安定化機構を明らかにするために「準安定」な状態を理解する必要があります。そこで、油と水のみで作られた「不安定」なエマルションの分散安定性を研究することにより、コロイド分散系の「準安定」な状態を理解しようと試みたわけです。乳化剤を使用しないことにより、これまで見えなかったエマルションの姿が見えてきました。

協和/亀井社長:先生は大学時代からこの研究を続けてこられたのですね。

酒井教授: 私が学生のころ、「この職業に就きたい」というような明確な進路の希望はなく、先輩に誘われて界面科学の研究室に配属されました。
研究室では、「準安定の科学」というテーマをいただきました。水と油が混合したエマルションは、乳化剤を使えば安定します。どうすれば準安定な状態を作り出せるのだろうと没頭したのが、この研究をはじめたきっかけです。そうして研究を進めるうちに、「将来も大学で研究したい」という希望が芽生えてきました。このテーマがなければ、現在はなかったと思っています。

実は、当時、「大学で研究したい」という希望は夢のままで終わると思っていました。つまり、あきらめていたわけです。そのため、修士課程修了後、博士課程には進学せず、高校の教員となりました。しかし、「大学で研究したい」という夢をあきらめきれず、高校の教員を退職し、博士課程に入学して、「準安定の科学」「乳化」の研究を再び始めることになりました。博士課程修了後、ニューヨーク州立大学などで博士研究員をしたりと、職を転々としていたため、「準安定の科学」「乳化」の研究から遠ざかることになります。
また、「大学で研究したい」という希望の実現も難しい状況になりました。そのため、渡米中に就職活動をして、あちらの企業で採用していただき、企業での研究をすることが決まったのです。しかし、「やっぱり日本の大学で研究したい」という夢をあきらめきれず、企業からの内定を断り、帰国したのです。帰国後、母校であります東京理科大学にて2年間お世話になり、その後、現在勤務している信州大学で採用していただきました。遠回りになったものの夢がかない、今は「目に見えない界面の世界」と向き合う毎日です。

協和界面科学との出会い

論文で発表されている数値に基づき研究してきたが、自分たちでも正確に計測をしてみたいと装置を探すことに。

酒井教授・亀井

協和/亀井社長:当社の表面張力計をご検討いただいたきっかけは、何でしょうか?

酒井教授:界面という世界は目に見えないものです。それを研究するには、界面張力を測定して物性値などの目に見えるものを求めてから想像するしかありません。

ところが、私が研究している水と油に関しては、たくさんの文献で測定値が紹介されています。基本的には論文などの数値データをもとに研究や実験を行ってきたため、自分たちで計測するという機会がありませんでした。

ただ、これまでの論文で紹介されている数値は、水と油が分離した状態の計測値だったりする。平たくいえば、水と油を混ぜて粒々になった油が浮遊する状態で計測すると、もしかしたら違う値が出るかもしれません。これを自分たちで正確に計測できる装置がないかと求めていたときに、協和界面科学と出会いました。

協和/亀井社長:それで、当社のショールームにお越しになったわけですね。

酒井教授:研究室の学生を連れて、協和界面科学のショールームに足を運びました。見学というよりも、実際に装置を触ってみたかったのです。

その時、担当してくださった方に私たちの研究内容をお伝えしたところ、最初は思うような反応がいただけず、つまりあまり興味を引き出すような“魅力さ”はなかったんですね。担当者の方の想像では、最初は何が特別なのか認識されていなかったようでした。

しかし、実際に装置を使って実験してくださり「えっ?どうして油滴は合体しないの?」と、逆に質問されまして(笑)。

そういう経緯から、私たちの研究に興味を持ってくださり、装置の提供だけでなく私たちが求める新しい装置の共同開発にもご協力いただける関係性を築き上げています。

界面科学の研究を通じて人に幸せを届けたい

4000年以上前から存在するが未だに謎の多い界面活性剤

亀井

協和/亀井社長:界面科学の魅力とは何でしょうか?

酒井教授:私が研究しているコロイド界面科学の歴史は150年くらいですが、まだまだ謎の多い世界です。その謎を解き明かしていくのが、界面科学の魅力ではないでしょうか。

界面活性剤は、古くから洗剤として使われています。洗剤を用いて洗浄するという行為は、古代メソポタミア文明時代から行われていましたからね。そんな昔の人が、なぜ洗剤を使っていたのか?
私は、「きれいにすると皆が幸せになる」のを古代の人も知っていたのだと思うのです。

界面活性剤は人類最大の発明の一つであると、私は思っています。これがなければ、現代人は生きていけない。たとえば、髪を洗うシャンプーや、体を洗う石鹸など、界面活性剤を含む商品を使うのが日常になっています。それらを使うことでスッキリするし、気持ち良くなるなど、みんなの幸せにつながっているでしょう。

一般の人が界面科学を知る機会はそうそう無いことだと思いますが、界面科学があるから今の生活が成り立っています。私たち研究者は日々、界面をコントロールしながら皆さんに少しでも幸せを提供したいと日夜研究に努めているのです。その幸せを最大化するには、私たちが界面の世界をもっと深く研究する必要があります。そのため、信州大学工学部においてコロイド&界面科学研究センターを立ち上げました。この研究センターが、その一助になればうれしいです。

協和/亀井社長:私たちに与えられたミッションは、「世の中にあるすべての界面科学に残された謎を解き明かすこと」だと考えています。当社も界面の謎を解明するミッションに、ぜひ協力してまいります。

酒井教授:いろいろ協力いただき、感謝しています。「こんなことはできますか」と私たちの無理な依頼に応えてくださるのは、私たちと一緒にミッションを達成したいという共通認識があるからだと思っています。

協和界面科学は、私たちのざっくばらんな会話から要望を的確につかみ、真摯に応えてくださいますし、装置開発を一緒に取り組んでいただけるのも頼もしく感じています。これからも、一つでも多くの界面科学の謎を解き明かしながら、より広く、より多くの人に界面科学の素晴らしさを伝えられるよう取り組んでいきましょう!

協和/亀井社長:こちらこそ、よろしくお願いいたします。本日はいろいろお話をいただき、ありがとうございました。

信州大学工学部「コロイド&界面科学研究センター」のサイトはこちらから
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