滑落法による撥水性の評価 2
ポイント
固液間の付着性指標として,付着エネルギーE (近似値)による評価を提案。
キーワード 撥水性,接触角,滑落法,滑落角,付着エネルギー
1. 滑落法
液滴を水平な状態から徐々に傾斜させるとき,液滴が滑落し始める時の傾斜角を滑落角といい(図1のα),同じ液量では滑落角の小さな表面は液体との付着性が弱い(液除去性=滑落性が良い)と言える。
滑落角の測定結果事例を図2に示す。同一液量の付着性を比較するとAの方が明らかにBよりも小さな滑落角,つまり滑落性に優れていることがわかる。
2. 付着エネルギー
滑落性を評価する場合,以下の2通りが考えられる。
1. 同じ液量にそろえて滑落角を比較する。
2. 傾斜角を固定して滑落し始める液量を比較する。 いずれも液量もしくは傾斜角のどちらかをそろえる必要があり,異なる場合は比較することができない。
そこで,液量や傾斜角などに左右されない指標(近似値)が提案されている。具体的には,滑落角αでは液滴の重力の傾斜方向成分と接触円周縁部にはたらく付着力がつり合っていると仮定し,次式が成り立つとする。
ここで, はそれぞれ液滴の質量,重力加速度,滑落角,接触半径,単位長さあたりの付着力(以降,E を単位面積あたりの仕事=付着エネルギーmJ/m2とする)。図2の結果を(1)式へ代入し,各液量ごとの付着エネルギーE をプロットしたものを図3に示す。
図2,図3より,付着エネルギーE は滑落角に比べて液量依存性が小さく, BはAの2倍ほど水との付着性が大きいといえる。このように,付着エネルギーE は液体と固体の組合せで決まる1種類の評価指標として期待できる。
3. まとめ
付着エネルギーE は,液量によらない固液の組合せで決まる評価指標となる期待がある。