粘着・皮膜剥離解析装置
引張試験、剥離試験の既成概念を打ち破る
塗料、インキ、粘着剤等の材料設計において、接着性は各種物性の中でも重要な評価項目に位置付けられています。従来から、剥離試験には金属材料試験に用いられてきた縦型の材料強度試験機を用いられて来ました。
ところが剥離試験で測定したいとされる、実際のアプリケーションで求められる粘着や剥離の特性は非常に幅が広いため、軽荷重や高速引張速度領域での試験は困難を極めていました。 その時から剥離強度を精度よく測定する方法の実現が、物性屋としての長年の課題であると考えていました。
円形ローター法の開発
ある時セロハンテープのテープカッターを使用していて、テープが90度で引き出されてくることに気付き、この構造が90度剥離試験に応用できないか考えました。実際に引張試験機に同様の治具を取り付け剥離強度を測定し、90度剥離であること、またデータの再現性がよいことを確かめました。これが横型で軽荷重と高速試験の両方が実現できる、剥離試験装置の開発のスタートとなりました。
試験機の開発に当たっては回転による抵抗を小さくし、回転体の重量バランスとモーメントの低減を図り、図1に示す回転ローター法のプロトモデルを作製しました。回転ローター法の特徴は、確実に90度を維持しながら、伸びる基材であっても測定でき、更には基材の伸び率も測れることにあります。
円形ローター法から平板クロスステージ法へ
円形ローター法は伸びの大きい材料の試験を可能としました。また、JIS Z 0237では粘着テープの試験はSUS板の使用が規定されていることから、円形ローター法専用のSUS製試験板も用意しました。
ところが市場においてはJISの試験方法をそのまま流用するよりは、実際のアプリケーションに限りなく近い方法で測定したいとの強い要望がありました。円形ローター法は被着材が曲面という制約があります。ガラス板や樹脂板など平板の被着材での測定は不可能です。また、いかに90度で正確に引張ることができても、軽剥離においては基材を曲げた時点ですぐに被着材から剥がれてしまうという課題が残ります。
そこであらゆる角度における簡便で精度のよい剥離試験を可能とする平板クロスステージ法(図2)の開発に至りました。平板クロスステージ法では当初の課題であった軽荷重や高速引張速度領域での試験も実現することができました。
先端工業分野における積層技術を支えたい
半導体や電子部材等で使用される高機能材料においては、ラミネートやコーティング技術を利用して作られる積層膜の仕上がりが品質を大きく左右します。また生産工程で一時的に使用されるフィルムシートも適度な粘着性と高速剥離性が求められ、アプリケーションごとの最適化が重要となります。
あらゆる角度で、かつ幅広い引張速度で剥離試験が迅速にできるVPAシリーズは、生産プロセスの適正化、薄膜や積層膜の設計指針を立てる上で剥離試験の新たな可能性を示します。
90度剥離試験の様子
120度剥離試験の様子