ゼータ電位とは
ゼータ電位とは、粒子が持つ静電気的な反発力です。 分散系において、粒子の凝集や沈降・浮上は製品の品質や性能に大きく影響します。 ゼータ電位や粒度分布はこれらの現象を定量的に評価できる指標の一つであり、 分散安定性の予測や制御によく用いられています。
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ゼータ電位とは
図は粒子がマイナスに帯電している場合を示しています。

図1 液体中に分散する粒子のイメージ図
液体中にはイオンが存在しており、粒子表面の電荷を打ち消すように、反対符号のイオンが粒子表面近傍に集まり、層を成します。この層を「イオン固定層」といいます。さらにその外側には、プラスおよびマイナスのイオンが拡がった状態で分布しており、これを「イオン拡散層」といいます。これらの層を合わせて「電気二重層」と呼びます。
このような系に電場を印加すると、粒子は電荷の符号に応じて移動(電気泳動)します。イオン固定層は粒子とともに移動しますが、拡散層の一部は粒子とともに移動せず、その場にとどまります。この時、粒子とともに移動する領域と、移動しない領域の界面を「すべり面」といいます。ゼータ電位とは、「粒子から十分に離れた位置での電位をゼロとした時の、すべり面における電位」のことです。
液体中の粒子はブラウン運動により常に運動しています。また、粒子間にはファンデルワールス力と呼ばれる引力がはたらいています。このため、粒子同士が接近すると凝集が生じます。一方で、ゼータ電位の絶対値が大きいほど粒子間の静電的反発力が強くなり、凝集が抑制されます。そのため、ゼータ電位は分散安定性の指標として広く用いられています。
分散安定性とは
分散安定性とは、液体中に分散した粒子が凝集や沈降・浮上を起こさず、均一な分散状態を維持する性質を指します。分散安定性はゼータ電位だけでなく、以下のような複数の要因も関係します。
<分散媒の粘度>
分散媒の粘度は粒子の運動性に影響を与えます。
粘度が高いほど粒子の移動は抑制され、粒子同士が接触する機会が減るため、凝集が起こりにくくなります。
<ぬれ性>
粒子と分散媒のぬれ性も重要な要因です。
ぬれ性が悪い場合、粒子は分散媒との接触面積を小さくしようとするため、粒子同士が集まりやすくなります。
<分散媒と粒子の密度差および粒子径>
粒子径が大きくなると、粒子に働く力の影響が相対的に大きくなります。
そのため、粒子と分散媒の密度差に応じて沈降または浮上が生じやすくなります。
測定手法一覧
代表的なゼータ電位の測定手法を以下に示します。
| 測定手法 | 観測量 | 対象試料 |
| 電気音響法(ESA法) | 超音波(振幅) | 分散液(濃厚系) |
| コロイド振動電位法(CVP法) | 電位差 | 分散液(濃厚系) |
| 沈降電位法 | 電位差 | 分散液(濃厚系) |
| 顕微鏡電気泳動法 | 移動度 | 分散液(希薄系) |
| 電気泳動散乱法(ELS法) | 周波数のずれ | 分散液(希薄系) |
| 流動電位法 | 電位差、電流 | 固体 |
| 測定手法 | 観測量 | 対象粒子径 | 対象試料 |
| 電気音響法(ESA法) | 超音波(位相遅れ) | 80nm~100µm | 濃厚系 |
| 超音波減衰法 | 超音波の減衰率 | 10nm~100µm | 濃厚系 |
| 沈降法 | 粒子濃度の時間変化 | 10nm~10µm | 濃厚系 |
| 粒子追跡法(PTA法/NTA法) ブラウン運動解析法 |
粒子の移動量 | 100nm~1µm | 希薄系 |
| レーザー回折/散乱法 | 散乱光強度の角度分布 | 10nm~数mm | 希薄系 |
| 動的光散乱法(DLS法) | 散乱光強度のゆらぎ | 1nm~10µm | 希薄系 |
当社で測定できる手法
分散液に交流電圧を印加し、粒子を振動させることにより生じる超音波(ESAシグナル)の振幅からゼータ電位を、交流電圧と発生する超音波との位相差から粒子径を評価します。
分散液に超音波を伝搬させると、超音波は様々な要因で減衰します。伝搬した超音波を検出器で受信し、その減衰率から粒度分布を算出します。
よくある質問
Q
どの測定手法を選べばよいかわかりません。
A
試料濃度や粒子径、試料状態によって適した測定手法が異なります。
例えば、ppmオーダーの希薄分散液には顕微鏡電気泳動法やDLS法、濃厚スラリーやペーストにはESA法や超音波減衰法が適しています。当社では、試料情報や測定目的をもとに最適な測定手法をご提案しております。お気軽にご相談ください。
Q
ゼータ電位はどのような試料で測定できますか?
A
インク、スラリー、エマルション、顔料分散液、ナノ粒子分散液などの分散系試料の他、フィルム、繊維、多孔体などの固体表面でも測定可能です。試料によって適した測定方法や前処理条件が異なるため、事前確認をおすすめしております。
Q
ゼータ電位が高ければ、必ず分散安定性は良いのですか?
A
必ずしもそうではありません。
ゼータ電位は粒子間の静電的な反発力を示す指標であり、分散安定性を評価する上で重要なパラメータです。しかし、実際の分散安定性は、溶媒粘度、粒子径、密度差、ぬれ性、添加剤の影響など、複数の要因によって決まります。そのため、ゼータ電位だけでなく、粒度分布やレオロジー特性などとあわせて評価することが重要です。
Q
pHによってゼータ電位は変化しますか?
A
はい、変化します。
粒子表面の官能基や吸着イオンの状態はpHによって変化するため、ゼータ電位も変化します。試料によっては、pH変化によりゼータ電位が正から負へ反転する場合もあります。
Q
濃厚なスラリーでも測定できますか?
A
測定可能です。
ただし、測定手法によって適用可能な濃度範囲が異なります。例えば、ESA法や超音波減衰法は濃厚系試料に適しており、希釈が難しいスラリーやペースト状試料の評価にも利用されています。



