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表面自由エネルギーとは

表面自由エネルギーとは、物質表面が持つ過剰なエネルギーを表す物性値であり、ぬれ性や接着性、付着性を理解するうえで重要な指標です。その起源である分子間力がさまざまな相互作用の寄与によって成り立つため、表面自由エネルギーを分散成分や極性成分などに分けて考えることで固体表面の特性を解析できます。近年では接着、コーティング、防曇、表面改質など幅広い分野で活用されています。

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表面自由エネルギーとは

表面自由エネルギーとは、その名のとおり、物質の表面が有する自由エネルギーです。一般に、自然現象は自由エネルギーが減少するように進行するため、物質の表面自由エネルギーが分かれば、その物質表面が関わる現象について深く考察することができます。
表面およびバルクの分子に働く分子間力のイメージ
図1 液体表面の分子に分子間力がはたらくイメージ

図は物質表面付近の分子の並びとそれらの間にはたらく力の様子を表しています。バルク(内部)に存在する分子ではあらゆる方向に分子間力がはたらくのに対して、まさに表面に存在する分子では空気へ接する側への分子間力のはたらきがありません。そのため、物質表面の分子は、大気側に引き合う相手を求め、過剰なエネルギーを有します。そして、これが表面自由エネルギーγ [mJ/m2]および表面張力γ [mN/m]の起源です。

表面自由エネルギーと表面張力は、単位の形は異なるものの、次元は同一であり、数値的には等しいものになります(1 mJ/m2 = 1 mN/m)。そのため、ある物質についての表面自由エネルギーの値が分かれば、それを表面張力の値とみなすことができます。なお、固体では表面自由エネルギー、液体では表面張力と表現されることが多いです。

では、両者の違いは何でしょうか。それは特に固体表面の評価において、表面自由エネルギーを分散成分や極性成分などに分けて扱う考え方があることです。この成分分けによって、γの大きさだけでは説明ができない事象について考察できるようになります。

分子間力と表面自由エネルギーの成分分け理論

分子間力とは、分子間にはたらく、さまざまな相互作用の総称です。これらの相互作用は起源の違いによっていくつかに分けて考えられるため、表面自由エネルギーも同様に、それぞれの寄与を分けて扱うことができます。例えば、以下に示す分子間力と表面自由エネルギー成分の対応が考えられます。このとき、全成分の総和がその物質の表面自由エネルギーγとなります。このような成分分けについては、複数の学者がそれぞれ異なる考え方や成分の分け方で理論を提唱しています。
分子間力 どのような分子間力か? 対応する表面自由エネルギー成分
分散力 無極性分子を含むあらゆる分子では量子論的に電子の瞬間的な偏りが生じる可能性があり、その連鎖の結果として分子間にはたらく静電引力 分散成分γd
配向力 近接した極性分子の間にはたらく正電荷と負電荷の引力 双極子成分γp
誘起力 極性分子の近接が無極性分子における電子の偏りを誘起し、その結果として生じる極性分子-無極性分子間の静電引力 非常に小さいことから無視できる
水素結合 水素原子Hが電気陰性度の大きい原子X(F、O、Nなど)と共有結合しているときに、そのHと近傍の別のXとの間にはたらく静電引力 水素結合成分γh

ぬれ性との関係

液体と固体のぬれ性を数値化するのに最適なのは(静的な)接触角θを測定することです。この接触角θは以下のYoungの式で表されます。
Youngの式
ある固体で複数の液体とのぬれ性を比較すると、大概の場合、液体の表面張力が小さいほど接触角は小さくなり、固体に対して、ぬれやすくなります。この一般的な傾向は、ぬれ性の予想・制御において、非常に有用です。
しかしながら、前述の傾向から外れる例もあります。例えば、清浄なガラスとの接触角を水(γL = 72.8 mN/m)とn-ヘキサデカン(γL = 27.6 mN/m)で測定すると、水のほうが、n-ヘキサデカンよりも表面張力が大きいのにもかかわらず、接触角はより小さくなります。このようなときこそ、表面自由エネルギーの成分分け理論が有力な評価指標になり得ます。
 液体の表面張力 高い(72.8 mN/m) 低い(27.6 mN/m)
測定画像例 ガラスに対する水接触角画像 ガラスに対するヘキサデカン接触角画像
液体 n-ヘキサデカン
固体 ガラス ガラス
接触角 9.8° 13.9°
上記の例で北崎・畑の成分分け理論に基づいて各物質の表面自由エネルギー成分(γd、γp、γh)を求めた結果が以下の表です。ここから、各成分の値と構成比について、ガラスにより近しいのは水であることが分かります。そして、「表面自由エネルギー成分が似通っているから、よくぬれたのではないか」という考察ができます。これは、液体の表面張力γLだけに着目していたら、決して得られなかった知見です。
以上から、表面自由エネルギーのポテンシャルを感じられたのではないでしょうか。
北崎畑理論表面自由エネルギー解析値

固体の表面自由エネルギーの算出方法

液体の表面張力γLとは違い、固体の表面自由エネルギーγSを直接測定することは、通常、非常に困難です。しかし、成分分け理論に基づけば、数種の液体との接触角θから固体の表面自由エネルギーを算出することができます。
付着仕事のイメージ
図2 物質表面にはたらく表面張力と付着仕事のイメージ
図のように、付着している2つの物質の界面には界面自由エネルギーγ12が働いています。Dupreの式にある付着仕事(接着仕事)W12とは、それらを互いに解離させるために必要なエネルギーのことです。このとき、物質1と物質2が液体と固体であれば、下記のYoung-Dupreの式を導くことができます。
Young-Dupreの式
ここで成分分け理論を適用すると、WSLがγSとγLの各種成分によって推定されるため、Young-Dupreの式の左辺を書き換えて、γの各種成分と接触角θの関係式が得られます。例えば、当社の解析ソフトウェアFAMASが採用している5つの理論では以下のとおりです。
様々な表面自由エネルギー成分分け理論
そして、成分分けの成分数と同数のプローブ液体(γLの各成分値が既知の液体)を用意し、それらと固体の接触角測定を行えば、未知数がγSの成分値のみの連立方程式が得られます。したがって、これを解くことでγSの成分値(γSdとγSp)が分かります。また、γSはそれらの総和です。もしKaelble-Uy理論(2成分)に基づくならば、プローブ液体は2種(L1とL2)必要となり、接触角測定の結果から以下の連立方程式を得ることになります。
表面自由エネルギー成分分け連立方程式
【補足】

上記のもの以外にも成分分け理論はあります。また、多くの成分分け理論を否定する意見もあります。これらの事実を踏まえると、以上の手順は確立されているとはいまだ断言できません。測定者が自ら、試行錯誤を重ね、最善の方法を見つける必要があるかもしれません。そのため現状では、表面自由エネルギー解析は、ほかの表面分析手法と組み合わせ、それらの補完として用いることが推奨されます。

応用が見込める領域

前述のDupreの式が示すように、表面自由エネルギーは物質と物質の付着性(あるいは接着性)とも関係があります。このことを踏まえると、表面自由エネルギーは以下のような場面でも活用が期待されます。
物質に施す処理 性質の変化 表面自由エネルギーの増減
  • UV照射
  • プラズマ処理
  • コロナ処理
  • 光触媒コーティング
などの表面改質
樹脂部品の接着性の向上
親水性の向上によるフィルムの汚染および曇りの防止
増大
  • PVD
  • CVD
などの薄膜コーティング
金型の離型性の向上
自動車部品における摺動部の低摩擦化
低減

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