粘着力・剥離力とは
粘着テープは、比較的弱い圧力で瞬時に圧着でき、剥離も容易にできる基本的特性をもち、取り扱いも簡便であることから、種々の分野で使用されています。半導体、ディスプレイ、 光学機器、医療、自動車、情報関連など高機能化が進む分野で、粘着剤のユニークな機能が生産プロセスからデバイスの内部にまで活用されています。
粘着テープは基本三要素とされる「タック」、「粘着力」、「保持力」からその物性が評価される。剥離試験(引張試験/万能試験)は「粘着力」を数値的に捉える主要な試験です。粘着テープの剥離強度測定法としては JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)が定められ180度剥離試験法および90度剥離試験法が試験・評価の主流となっています。180度剥離は粘着テープの厚さや弾性率の影響を受けるが、90度剥離は支持体の影響が小さく粘着力や接着力のみの評価に適していると考えられます。しかし、90度剥離試験は治具がやや複雑であること。粘着テープのたるみや伸び変形による90度からのずれもあり実用上の不備があるのが現状と考えます。
任意の角度での剥離試験が行える試験法は従来より提案され、市販されている試験機もあります。既に公表され、自在に剥離角度を精度良く変えて剥離試験ができる試験法の原理を図1に示します。

図1 従来法による多角度剥離試験法の原理図
この方法は、いわば、幾何学的条件を満たすことにより、被剥離基材面の直線的な移動に対して常に設定した剥離角度を保持するというものです。図中の補助線から角度αで移動ステージと剥離力検出器を傾けることがポイントです。そして、剥離角度はで与えられます
被剥離基材を装着した移動ステージが位置(Ⅰ)から位置(Ⅱ)まで移動したとき、
剥離距離は、引き剥がした粘着テープの引張距離は
となり剥離距離=引張距離であるので剥離角度が正確に保持されたまま剥離が進行することがわかります。
一方、移動ステージの移動距離はとなるので剥離速度の設定ではステージ移動速度VSと剥離速度VPの間には下式の関係が成立し、剥離角度θに依存したステージ移動速度の設定が必要になります。

当社では、多角度剥離ができる平板クロスステージ法の機構を搭載した次世代引張試験機 粘着・剥離解析装置を開発しました。 平板クロスステージ法の原理を図2の平面図で説明します。

図2 平板クロスステージ法の原理を示す簡略図
横型引張試験機の機能を活かして、剥離力線と剥離角度を成して移動する平板の移動速度を引張速度と同期することにより0〜180度の範囲で剥離試験が精度良く行うことを実現しました。アクチュエーターによって回転ステージが矢印B方向に移動するとき、上下2段の駆動ギアとガイドギアとで駆動力が伝達され被剥離基材が装着された平板クロスステージは矢印A方向に移動する。このときステージ移動速度と剥離速度は等しくなります。また、この平板クロスステージ法では回転ステージを回転させて剥離角度を設定可能で、0度から180度まで一つの操作で簡便にできる独自の機構を有しています。
参考資料
【アプリケーションデータ】 粘着・皮膜剥離解析装置の測定手法および測定例をご紹介いたします。
【月刊誌掲載】 粘着・皮膜剥離解析装置 VPAシリーズ (2011年1月号ポリファイル誌特集記事)
掲載記事を読む 【月刊誌掲載】 粘着・皮膜剥離解析装置による剥離強度解析 (2013年3月号ポリファイル誌特集記事)