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チタニアコーティングの研究

概要  ZetaProbeやAcoustoSizer Ⅱxでは、原液の状態で粒子の等電点や表面コーティングの状態を評価できる。
関連ワード:分散液(懸濁液、スラリー)、等電点(IEP)、pH滴定、表面修飾(コーティング)、原液、ゼータ電位 >

1. はじめに

 チタニア(TiO2)は白色顔料であり、塗料・インク・紙・合成繊維、化粧品などの幅広い分野で利用される重要な材料である。また、コーティング剤や反射剤、光の散乱剤・吸着剤としても使用されている。しかし、チタニアには、光により表面から電子を放出し、その電子が周囲の物質に化学的損傷を与える可能性がある「光活性の性質を持つ」という重要な欠点がある。そのため、チタニア粒子は通常、シリカ(SiO2)・アルミナ(Al2O3)・ジルコニア(ZrO2)などの酸化物やこれらの混合物により薄くコーティングされている。

2. ZetaProbeを用いたpH滴定

 ゼータ電位が0 mVになるpHを等電点(IEP)といい、清浄なチタニアではpH6前後、シリカではpH2前後、アルミナではpH9前後が代表的な値である。等電点は、酸とアルカリを用いたpH滴定により測定することができ、粒子表面のコーティング状態を特定するための指標の1つとなる。

 図1は未コーティングのチタニアの測定結果を示しており、等電点はpH6.2であることが分かる。これに対して、図2ではシリカコーティングのチタニアの測定結果を示しているが、等電点は一般的なシリカの等電点に近いpH2程度であり、酸側に移動したことが分かる。ZetaProbeでは、このようなpH滴定測定を30分以内に実施できる。また、図2は清浄なシリカ粒子と同じ滴定曲線であり、シリカがチタニアを完全にコーティングできているほど十分な厚さがあることがわかる。

3. AcoustoSizer Ⅱxを用いたコーティング状態の評価

 完全にコーティングするためにはどの程度の厚みが必要なのか。また、薄いコーティングではどうなるのか。2つ目の疑問については、AcoustoSizer IIxを用いて評価した以下の実験結果が答えを示している。本実験では、チタニア分散液に塩化アルミニウムの量を少しずつ変えて添加し、コーティングの厚み違いによる滴定曲線の変化を評価した。低pH下で各量の塩化アルミニウムを添加した後、pHをあげるとアルミニウムイオン(Al3+)が加水分解し、酸化物または水酸化物として粒子表面に吸着した。未コーティング状態のチタニアでは等電点がpH5付近であったが、完全にコーティングされたチタニアでは、アルミナの等電点であるpH9.1まで変化しており、アルミナで完全にコーティングされていることが分かる。

 また、Djedjevらは、AcoustoSizer IIxでの等電点測定・誘電応答測定・コーティング層のTEM観察を組み合わせ、チタニア表面に形成されたシリカコーティングに関する詳細な研究を行った[1]。その結果、厚さが1 nm未満でも等電点はシリカの表面特性を反映して酸側に移動しており、それ以上厚くても滴定曲線は変化しないことがわかった。さらに、誘電率測定により、シリカコーティングしたチタニア粒子の誘電率は約20であることがわかり、清浄なシリカの値よりも高いことから、シリカ層内部で加水分解が起きている可能性を示唆している。

4.  まとめ

 ZetaProbeやAcoustoSizer IIxを用いたpH滴定により、チタニア粒子表面のコーティング状態を簡単に把握すること
が可能である。

参考文献
1. Djerdjev、 A. M.、 J. K. Beattie、 O'Brien、 R.W. 2005 "Coating of Silica on Titania Pigment Particles Examined
  by Electroacousstics and Dielectric Response.".Chemistry of Materials 17 (15) 3844-9.2005

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