炭素繊維プリプレグシートと剥離紙の剥離性評価
ポイント
実使用環境に近い高速剥離試験による評価が可能である。
キーワード 高速剥離試験
1.はじめに

炭素繊維プリプレグは、炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状の材料であり、軽量で高強度・高剛性の優れた特長を有することから金属に代わる材料として幅広い分野で採用されている。また航空機の胴体や主翼の製作に使用されることからも安全面に対する要求は非常に高い。
プリプレグ積層体は、プリプレグ積層ヘッドを搭載した自動装置によって被積層体上に形成される。積層ヘッドの機構上、プリプレグが積層されるのとほぼ同時に剥離紙はプリプレグ表面から剥離され紙回収ローラーに巻き取られるが、ここでは容易にプリプレグから剥離されることが求められる。(特許では0.7〜3.0N/25mmの報告あり)
さらには、剥離強度が小さ過ぎると使用前にプリプレグと剥離紙が剥がれてしまうトラブルが発生し、剥離強度が大き過ぎるとプリプレグにシリコーンが付着するトラブルが発生することから、プリプレグ剥離紙の強度は常に最適な状態に管理する必要がある。
2.解決すべき問題
3種類の剥離紙A,B,Cの剥離強度を評価しているが、評価結果と実際の積層装置での剥離強度は異なっていた。積層ヘッドは30m〜60m/minの速度で動作するため、現実的な剥離速度、剥離角度で評価したいが、従来の試験機では最速でも1000mm/min程度であり、また剥離角度も調節できないため、測定において実使用環境の挙動と結果を再現できない。
3.測定条件・結果
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測定には軽荷重タイプ粘着・皮膜剥離解析装置VPA-3を使用。剥離紙A,B,Cについて以下の条件で剥離試験を行った。
- 条件1:剥離速度 1000mm/min,剥離角度 180 °
- 条件2:剥離速度 30000mm/min,剥離角度 45 °
- の結果、従来測定条件と同じ条件1では、剥離強度は C>A>B の順位で大きかったが、積層装置とほぼ同条件で設定した条件2の剥離強度順位は A>C>Bとなり、積層装置の剥離強度順位と一致した。

