電極材料における電極スラリーと金属箔の密着性評価(剥離速度依存性)
ポイント
剥離速度を変えることで、より明確な試料間の差異を見出すことが可能です。
キーワード 剥離速度
1.はじめに
リチウムイオン電池の長寿命化および高容量化等の性能は、電極材(活物質)と集電箔との密着性や、活物質の結着に用いられるバインダーの分布状態に依存すると考えられます。導電性能の視点で見るとバインダーは不純物であるため、なるべく少量で均一に分散させて点と点を結ぶことで最適な密着性を得られます。
2.解決すべき問題
電極スラリーの塗工層と金属箔との密着性についてセロハンテープによる180°剥離試験にて評価するとき、密着力は微小応力であり、差異が見られません。そこで剥離角度を90°とした場合の速度依存性試験で、塗工層の膜厚の違いによる微小応力の差異を見いだせないか試験しました。
3.測定条件・結果
- 測定には粘着皮膜剥離解析装置 VPAを使用しました。1回の剥離工程では、10mm剥離するごとに剥離速度を6mm/min、12mm/min、30mm/min、60mm/min、120mm/minの5段階で変化させて速度依存性の試験をしました。
- その結果、各膜厚において低速域で剥離力が大きく、密着性が強い傾向が見られました。
- 塗工層の膜厚が薄いほど低速域の密着性が強く、低速域と高速域の差が顕著です。
- 塗工層の膜厚が厚いほど剥離力が小さく、密着性が弱い傾向が見られました。これは膜が厚くなることで凝集剥離をしているものと考えられます。