接触角・動的接触角とは
接触角とは、液体が固体表面にどれだけぬれ広がるかを角度で表した指標です。接触角を測定することで、材料表面のぬれ性・付着性・防汚性・塗布性などを定量的に評価できます。さらに、動的接触角や滑落角、粉体接触角などを用いることで、実使用環境に近い液体挙動の解析も可能です。
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接触角(ぬれ性)とは



接触角の測定原理


接触角の解析原理
接触角の解析手法には一般的にθ/2法が用いられており、液滴の半径rと頂点の高さhを利用することで接触角θ求めることができます。液滴の輪郭が真円の一部を成すとみなせるとき、接触角θと図中の角度φとの間にφ=θ/2という関係が幾何学的に成り立つことを利用しています。つまり、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度を求め、これを2倍することで接触角θを求めます。

実際の液滴は重力によって潰れますので、輪郭は真円からずれます。液量もしくは接触角が大きな場合には、この傾向が顕著になるため、カーブフィッティング法が有効です。この方法は、輪郭全体または一部のみを楕円やその他のモデル曲線で近似するものです。重力によって液滴形状が潰れている場合でも、ある程度はその影響を考慮して接触角を求めることができます。なお、液量が小さい場合には重力の影響を無視できるため真円の曲線でフィッティングしても問題なく、これもまたカーブフィッティング法に含まれます。

図8のように液滴端点近傍を球の一部とみなし、円弧上の点L1、L2、L3から円Oの中心Mを求めると、点L1における円の接線を求めることができます。求めた円の接線と固体表面の成す角度が液滴左側の接触角です。同様に円弧上の点R1、R2、R3から液滴右側の接触角も求めることができます。

実液滴は重力の影響を受けて潰れているため、厳密には円や楕円ではなくYoung-Laplace理論曲線に従うと考えられています。Young-Laplace理論曲線は以下の連立微分方程式で表され、接触角は連立微分方程式の解として求まります。


静的・動的接触角とそれらの測定方法
液滴法では、水平な固体表面に液体を滴下し、水平方向からの観察によって接触角を測定します。ぬれ性を評価するための最も基本的な方法であり、固体の表面自由エネルギーを推定する際にも使用されます。固体試料面で液滴がおおむね静止した状態を測定するため、得られた接触角は静的接触角といわれます。しかし、接触角を時間変化と共に連続的に測定すれば、固体表面へのぬれ性の変化、固体への吸収、液体の空気中への揮発などの動的挙動も解析できます。

滑落法では固体表面を傾斜させた状態で接触角を測定します。この状態では、重力によって液滴が試料表面に沿って滑り落ちようとします。滑り落ちようとする方向を前進とみなして、こちら側の接触角を前進角θAと、もう一方の接触角を後退角θRといいます。このような接触角は、固体試料上で液滴が変形・移動する状態で測定することになるので、動的接触角といいます。
固体試料を水平な状態から徐々に傾斜させていくと、ある角度で液滴が滑り出します。このときの固体表面の傾斜角度を滑落角αといいます。液体と固体との付着力が大きければ液体が滑り出すのに大きな傾斜角を要するため、滑落角αは液体と固体との付着力の指標になります。

拡張/収縮法は、注射針を固体表面の間際まで近づけ、その状態で液体試料を吐出・吸引して接触角を測定する方法です。液体を吐出すると、液滴は固体表面上に広がっていきます(拡張)。このとき、接触角は前進角θAといいます。ある程度液体が広がったところで今度は吸引すると、液滴は固体表面から取り除かれていきます(収縮)。このときの接触角は前進角θA対して後退角θRといいます。
液体試料を持続的に吐出し、液体を固体表面に強制的にぬれ広がらせるというと、まずスピンコートによる「ぬれ」がイメージされますが、これに限らずロールコートなどその他コーティングにおける動的な「ぬれ」も前進角θAでは評価可能です。一方、液体試料を吸引して測定する後退角θRでは、液体を強制的に引っ張ることから、液切れ性・剥離性の評価が可能です。

Wilhelmy法は水平な液体試料面に対してプレート状の固体試料を垂直に接触・上下動させます。表面張力の測定方法の1つであるWilhelmy法を転用したもので、プレート状の固体試料を液体中に沈めていくときの前進角θAと、液体中から固体試料を引き上げるときの後退角θRを測定します。接触角を求める式は表面張力を求める際と同じです。天秤で感知した固体試料にはたらく力F、固体試料が液体試料から受ける浮力、固体試料の周囲長にはたらく既知の表面張力から接触角を求めます。


特殊条件下における接触角測定
ぬれ性の代表的な評価指標である接触角は、基本的に「空気中で液体/固体間」で測定します。一方、三態系測定といって「液体中で気体/固体間もしくは液体/固体間」で接触角を測定する方法もあり、液中における気泡の付着性や液滴のぬれ性が評価できます。例えば、浮遊選鉱や洗浄、電極反応などでは気泡の付着がプロセス効率に大きく影響するため、実際に液中で固体に対する気泡の付着性を評価することは有効です。また、油水分離膜や防汚材料、海洋汚染対策材料の性能評価では、水中における油滴の接触角は直接の評価指標となります。このような液中における気泡や液滴の付着・広がり・離脱挙動の定量的な評価は三態系キットの使用によって可能です。具体的には図14のように固体試料を設置して、液滴の密度が周囲液体より大きい場合はストレート針を用いた正方向で、液滴(気泡)の密度が周囲液体より小さい場合は逆針を用いた逆方向で測定します。

ぬれ現象は円形を保ったまま進行するとは限りません。このことは、従来のように液滴を側面から捉えていては分かりませんが、液滴を真上から垂直に撮影するとよく分かります。上面観測キットを使用すれば、側面からの解析結果に加えて、上面からの接触角、半径、面積、扁平率のデータも取得でき、基材に対しての液滴のぬれ広がり方や染み込みの様子が多角的に観測できるようになります。なお、上面からの接触角θtvは、側面観測した液滴の高さhと上面観測した液滴輪郭に対する真円フィットカーブの半径Rをパラメータとして、θ/2法で算出します。


ウエハやガラス基板などに刻まれるパターンは技術の進歩と共に微細化されています。その微細領域におけるぬれ性評価には従来よりも微小な液滴の作製が必要となり、専用のガラスキャピラリディスペンサやインクジェットヘッドディスペンサを用いることで実現します。ガラスキャピラリディスペンサでは、内径5 µmのキャピラリ内に瞬間的に空気圧をかけることで十数pLの液滴が作製でき、上方向からのカメラ映像で着滴位置を確認しながら接触角を測定します。一方、インクジェットヘッドディスペンサでは、ピエゾ素子へのパルス電圧印加によってノズル内部に瞬間的な圧力変動を生じさせて液滴を吐出し、ガラスキャピラリディスペンサよりもさらに微小な数pLの液滴が作成可能です。

製造ラインや環境試験などの現場では、その場で材料を測定することや大型の試料を測定することが求められます。小型・軽量で持ち運び可能な接触角計は、フィルムや紙の試験片といった比較的小さな試料はもちろんのこと、大型のガラス基板も裁断することなくそのまま測定できます。ほかにも、自動車ボディのぬれ性を生産現場で車両のまま評価することも可能です。

粉体は固体を細かく粉砕したものの集合体であり、粉末のままだけではなく、加工してタブレットや分散系でも利用されます。そして粉体は物質の三態といわれている固体、液体、気体とは異なった特有の性質を持ち、これにより研究開発や生産現場では様々な課題が発生します。課題解決においては、粉体がどのような形態であっても、液体の浸透性やぬれ性が評価項目としてよく挙がります。
粉体への液体の浸透過程を表現しているとされるのがWashburnの式です。粉体を充填したカラムに液体試料を浸透させ、経過時間tに対して重量Wの変化を追跡すると、Washburnの式に基づいて理論上はtとW2の直線関係が得られます。そして、この直線の傾きから浸透速度や接触角が求まります。


接触角測定の活用事例
ぬれ性と一言で言っても捉え方は様々です。まずは液体の浸透性です。接触角測定では、液滴によって固体がぬれる様子を観察できるため、布地などへの液体の浸透も評価できます。次に塗料の塗布性です。塗料は対象物を実際にぬらすわけですから、「塗料をぬりやすいか」「均一に塗装できるか」ということが接触角から分かります。また、塗料は液体に固体粒子が分散したものです。分散には液体と粒子表面とのぬれが伴うため、粒子が均一に分散するかという分散性はぬれ性として捉えることもできます。最後に防曇性、すなわち固体表面の曇りやすさ・曇りにくさです。防曇性を付与する曇り止めの中には、ぬれをよくして付着した水滴の液膜形成を促すものとはじきをよくして水滴の除去性を高めるものがあります。これらの機能は、まさに「ぬれ」といえ、接触角で評価できます。

接触角は固体表面の清浄度の評価にも利用されています。きれいなガラスの表面は、水になじみやすい親水性の性質があり、水によくぬれます。しかし、油膜などで汚れているとぬれは著しく悪くなります。そのため、ビーカーやフラスコなどのガラス製品を洗ったあと、汚れが落ちたかどうかは水のぬれ具合からある程度、判断できます。このように固体表面のぬれと清浄度には深い関係があり、その清浄度は接触角によって定量化できます。実際に、生産工程で極めて高い清浄度が要求されるシリコンウエハ、タッチパネル、フラットパネルディスプレイなどの工業製品は、その清浄度の評価が接触角で行われています。

固体の付着性、接着性、離型性、防汚性の評価にも接触角が利用されています。接触角は液体や固体の表面張力に依存し、そして表面張力は分子どうしが引き合う力である分子間力に由来するため、結果的に接触角はモノとモノのくっつきやすさ・離れやすさ、すなわち付着性、接着性、離型性とも関係します。さらに、汚れは固体表面に付着するものであるため、接触角は防汚性とも関係があるといえます。

よくある質問
Q
接触角とは何ですか?
A
接触角とは、液体が固体表面にどの程度ぬれ広がるかを角度で示した指標です。角度が小さいほどぬれやすく、角度が大きいほど液体をはじきやすい表面と判断されます。
Q
静的接触角と動的接触角の違いは何ですか?
A
静的接触角は液滴が静止した状態でのぬれ性を示し、動的接触角は液滴が移動・変形している状態でのぬれ挙動を評価します。塗装やコーティング工程では動的接触角が重要視されます。
Q
接触角測定では何が分かりますか?
A
接触角測定では、材料のぬれ性、付着性、接着性、防汚性、離型性、清浄度などを定量的に評価できます。塗料、電子材料、フィルム、医薬品など幅広い分野で利用されています。
Q
前進角と後退角とは何ですか?
A
前進角は液体が表面上へ広がる際の接触角、後退角は液体が引き戻される際の接触角です。この差は「接触角ヒステリシス」と呼ばれ、表面状態の均一性や液滴の移動性評価に利用されます。
Q
粉体の接触角はどのように測定しますか?
A
液滴法のほかにWashburn法による浸透速度測定も広く用いられています。粉体層への液体浸透挙動を解析することで、粉体表面のぬれ性や浸透性を評価できます。
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