全自動接触角計 DM-901

協和の接触角計の歴史

協和界面科学の接触角計の歴史は日本における接触角計の歴史と言っても過言ではありません。

1号機は1960年に発売されました。測定手法としては、分度器に刻まれているようなスケールを内部に有した観測鏡を覗き、目視とマニュアル操作で液滴を計測し接触角値を算出するものでした。(図1)この手動タイプは2009年まで販売されました。操作性を度外視すれば、パソコンからタブレット端末に主役が移り変わりつつある現代においても、観測鏡を覗いて見た液滴の鮮明さは全自動機も足元には及ばないほど綺麗なものでした。接触角計手動タイプの新旧外観

     図1 接触角計手動タイプの新旧外観

 

 一方、パソコンがまだ一般には普及していない1980年代後半には、既に全自動機が販売されておりました。測定動作は全自動で横1列に液滴を着滴して解析し、事前に指定した回数の接触角測定ができるというものです。

その後はOSとパソコンの進化により、操作性や解析性能は格段に向上しましたが、全自動の基本動作としては、実に発売以来ほぼ25年踏襲されており、市場ニーズが衰えない中で現行のDM-701まで継承されています(図2)。ちなみに自動タイプが発売されたのは全自動よりも遅く、1990年代半ばのことでした。

 

 接触角計全自動タイプの新旧外観

      

 

     図2 接触角計全自動タイプの新旧外観

 

接触角計の自動と全自動は何がちがうの?

協和界面科学の接触角計ラインナップは自動、全自動のようにいくつかのグレードに分かれています。

それでは自動と全自動は何がちがうのでしょうか。

まず、接触角測定における接触角値算出までの手順は概ね以下のようになります。

 

①    液量制御・吐出 → ②固体試料への着滴 → ③接触角解析 → ④測定面移動 → ⑤データ処理

 

通常、1試料あたりの測定では測定ポイントごとのばらつきを見るため、数回の繰り返し測定を行います。そのため①〜④の動作を測定者が任意の回数繰り返し、最後に⑤で標準偏差、平均値を算出するというものです。

したがって、この5つの手順の中で接触角の解析を自動で行うか、すべてを自動で行うかで自動、全自動が区別されます(表1)。

 

接触角計の各グレードと測定動作      表1 接触角計の各グレードと測定動作

 

 手動タイプは全てマニュアル操作となるため、測定データに個人誤差が生じ易くなります。自動タイプでは接触角解析を画像処理で行います。そのため解析における人的誤差は解消できます。全自動タイプとなりますと液量制御、着滴操作に測定者の操作が介入しませんので人的誤差は全て排除できます。

 

DM-901になって何が便利になったの?

2012年8月に全自動接触角計 DM-901が発売されました。

従来からの全自動機能を持つDM-701との一番の違いは、ステージのY軸方向と回転の制御が可能となったことです。

 DM-701はステージ制御としては、Z軸(高さ方向)とX軸(光軸に対して垂直方向)はモータ制御となりますがY軸(光軸方向)と回転は手動となります。対してDM-901ではY軸と回転のモータ制御が可能となります(図3)。

これにより全自動機能としてDM-701はX軸方向の横1列の測定でしたが、DM-901では150㎜角ステージの全面を使った測定が可能となりました。

ここで特筆すべき点は、従来1枚の固体試料を1回の測定ごとに置き換えて測定していたのに対し、DM-901では予め複数の試料をステージに配置することで、試料を置き換えることなく一度に連続して全自動の接触角測定が可能となったことです。

 

 

     図3

 これがどれだけ便利なのかをご理解戴くため、再び接触角の測定手順をご確認ください。

     ①液量制御・吐出 → ②固体試料への着滴 → ③接触角解析 → ④測定面移動 → ⑤データ処理

DM-701の場合は、X軸方向1列における①〜④の繰り返しを含めた⑤までのプロセスが全自動となります。これに対しDM-901の場合について一例を上げますと、DM-701の一連の動作を終了後、更にX軸方向に同様の測定を任意の回数行うことが可能です。1列目のX軸方向の測定が終わると次にY軸方向に任意の距離を移動し、2列目では1列目と逆戻りの方向でX軸の測定を行います(図4)。このようにして前半分の測定を終えるとステージは180°回転し、今度は後半分の測定をX軸、Y軸移動を繰り返すことで150㎜角ステージの全面測定および複数試料の測定が可能となります。

 

ステージ上のDM-701とDM-901の測定動作イメージ 

    図4 ステージ上のDM-701とDM-901の測定動作イメージ

 

これの実現には、接触角の解析ソフトウェアである表面・界面の多機能統合解析ソフトウェアFAMAS(InterFAce Measurement & Analysis Sysutem-フェイマス)の2次元データシートが重要なポイントとなります。

 接触角測定評価においては、測定値のばらつきを確認するために1試料における測定ポイントを変えての繰り返し測定や、同一試料における個体間の再現性の確認も含めた複数試料間のデータ比較は必須と言えます。これを全自動で行うには、データ処理も含めた測定を1試料ごとにソフトウェア上で完結させる必要があります。

FAMASの2次元データシートは1行ごとに試料名等を入力するコメント欄と10列の測定データセル、標準偏差と平均値の表示セルを配置しています。1回の測定では、繰り返し測定と平均値と標準偏差を出力して完結となりますが、その後改行し、2行目以降は次の試料の測定を重ねて行くことで、1画面上で試料ごとのばらつき確認と複数試料間の比較が可能となります。

測定データセルは予め設定しておいた測定位置座標情報とリンクしており、3軸プラス回転モータ制御ステージと2次元データシートがうまく連携できるようになっています(図5)。

 これに対し接触角計メーカーの多くは、測定データの出力方法としては、時系列上のデータを1列にただ羅列しているだけの場合がほとんどです。そのためデータ処理は、市販の表計算ソフトを利用して測定値をコピー&ペーストして生データを加工して行います。

したがって測定自体は全自動で行っても、その後のデータ処理は一旦測定者の手作業が入ることで2段階の作業となります。これではたとえステージのX、Y、Z軸制御が可能であってもステージ動作が自動というだけであり、ソフトウェアとの連携がないためにハードウェアの性能が活かされていません。トータルとしてはこれが全自動の測定なのかと言うことです。

これに対してDM-901は、1試料ごとに測定データ処理まで完結し、これを複数試料について一連の動作をワンタッチで行うことができます。

 

2次元データシートの概要

 

     図5 2次元データシートの概要

 

ちなみにガラス板12枚をセットした水との接触角測定において1試料あたり5点測定で要した時間は、DM-501(自動)20分30秒、DM-701(全自動)10分50秒、DM-901(全自動)10分30秒でした。

 DM-701とDM-901とではその差わずか20秒ではありますが、DM-701の測定中は装置の前に付きっきりであるのに対し、DM-901では測定時間中は装置から解放され、その時間を次の測定準備やデータ考察に充てたりすることができることを考えれば、これは測定時間差以上の価値があると言えます。

 その他、DM-901の使い方として、例えば1つの固体試料に対して液体試料を替えて接触角測定を行う場合、予め5本のオートディスペンサに液体試料をセットし、マルチディスペンサシステムを活用することで1液の測定が終わるごとに自動液交換して再び測定面を自動移動しての測定が可能となります。液体試料を2液あるいは3液を必ず使用する表面自由ネエルギの解析等に便利な機能です。

 また生産ラインにおける全数検査を目的とした、ステージと搬送機をドッキングさせての特注対応も可能です。

 

従来の全自動測定のメリットは、測定における人的誤差の排除にありました。DM-901では人的誤差の排除に加えて測定効率が格段に向上します。

 生産の効率化を求めて企業がグローバル化を押し進めている中、一方では品質レベルを落とすことなく、如何に生産性と両立させるかというところは重要な課題であると言えます。

 品質検査や研究開発の現場でも省力化や自動化が求められる時代において、「ぬれ性」評価の部分ではDM-901は測定データの信頼性は従来のままに、顧客の測定効率追求に応えられる接触角計であり、ルーチンで多数の接触角測定を行うようなケースにおいては是非ともお勧めしたい一台です。

 

t01700045_0170004510835372707.jpg 全自動接触角計による省力化と生産性向上 (ポリファイル誌特集記事)

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