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表面自由エネルギーとは

固体表面上の液滴の接触角θは、固体の表面張力γS、液体の表面張力γL、固体と液体の界面張力γSLの3つが釣り合うことで決まります。 これを数式で表したものがYoungの式です。

表面自由エネルギー

一般的に表面張力とぬれ性の関係は

液体の表面張力が小さい → 接触角が小さい(ぬれやすい)
液体の表面張力が大きい → 接触角が大きい(ぬれにくい)

の関係が成り立ち、これは様々なアプリケーションでぬれや接着の制御に活かされています。

ところが現実的には、上記の関係が成り立たないケースも存在します。 このような場合においては、表面自由エネルギーと成分分けの概念を導入した手法が有効です。

表面張力と表面自由エネルギー

表面張力は、分子と分子の間に働く分子間力に起因します。右図のように液体表面付近の分子の状態は、バルクの分子はあらゆる方向に分子間力が働いているため、全体としては釣り合っています。しかし、表面の分子は横方向と内側にしか分子間力が働きません。

表面では大気側に引き合う相手を求めて過剰なエネルギーが存在し、これが表面張力となります。このとき、表面の分子は力のバランスが崩れ、液体の表面積が小さくなるように丸まろうとします。これが表面張力(分子間力)の大きさによって、ぬれ性が左右される所以です。

なお、液体の表面張力に対して固体の表面張力は、表面自由ネエルギーと呼ばれることが多いです。表面張力(mN/m)は、単位長さの線を引張るのに必要な力であるのに対し、表面自由エネルギー(mJ/m2)は、単位面積の面を広げるのに必要なエネルギーと表現され、単位は異なりますが値は等しくなります。

分子間力は、その働き方の機構によって分散力、配向力、誘起力、水素結合力に分類され、このうち水素結合以外の3つをvan der waals 力と呼びます。表面自由エネルギーが分子間力の働きに起因する以上、ここでもその機構に基づいた分類が考えられます。これが表面自由エネルギーの成分分け( γ = γd + γp + γh )の概念につながり、表面張力の大きさだけで、ぬれの関係が成り立たないような現象の解明に役立ちます。 以下に分子間力と表面自由エネルギーの成分分けの関係を示します。

分散力 全ての分子において、常に振動することで瞬間的に電荷の偏りが生じて双極子が発生し、 分子同士が引張り合う力。 表面自由エネルギー分散成分γd
配向力 極性分子が永久双極子によって正負の電荷の偏りが生じ、分子同士が正負で向き合って引張りあう力。 表面自由エネルギー双極子成分γp
誘起力 極性分子が無極性分子に接近すると、無極性分子が双極子を誘起することで電荷の偏りが生じて発生する力。 非常に小さいため、無視できる。
水素結合力 F-H、O-H、N-H 分子など、電気陰性度が大きな原子と水素原子間の強い極性により、水素原子が他の分子の電子供与性の高い原子と結びつく力。van der waals 力よりも強い力を持つ。 表面自由ネエルギー水素結合成分γh

下記は、先の表面張力値の大小とぬれ性の関係が成り立たない現象の一例です。これはヘキサンよりも表面張力が高い水が、ガラスに対してはヘキサンと同等以上にぬれるという現象ですが、この理由は、水の表面自由エネルギー成分がガラスの表面自由エネルギー成分に近いからといえます。このことからも物質同士の界面においては、表面自由エネルギーの大小よりも、それぞれの表面自由エネルギーの成分値が近いもの同士ほど、よく「ぬれる」あるいは「接着する」ことになります。よって表面自由エネルギーの成分分けの概念を導入することで、ぬれのメカニズムをより深く追及でき、ぬれ性制御への応用範囲も広がります。

表面自由エネルギーの現象事例

固体と液体のぬれ性や固体と固体の接着性は以下のような式で求められます。

表面自由エネルギーの求め方
表面自由エネルギーの求め方

とします。
これで、表面自由エネルギー成分が既知の液体試料3種(2成分の場合は2種)について接触角を測定し、連立3元1次方程式(連立2元1次方程式)によって固体の表面自由エネルギー各成分のγds、γps、γhsと固体と液体の付着仕事WSL、固体と液体の界面自由エネルギーγSLが求まります。

表面自由エネルギー接触角計では以下の5つの理論式を採用しております。

表面自由エネルギーの求め方

一方、表面自由エネルギーの考え方は上記以外にも多種多様な理論が乱立しており、成分分けを否定する考え方も存在します。その意味では、解析 技術としては十分に確立された手法とはいい難く、解析者自身が最良の方法を試行錯誤して探っていくしかないというのが実情です。 それからすると、決して表面自由エネルギーの解析結果だけを鵜呑みにして結論付けるのではなく、例えばXPSなど他の表面分析の解析手法と併せて相補的に活用していくことが望ましいといえます。 すなわち、表面自由エネルギーの解析結果をある予想や結論を裏付けるためのバックアップデータの一つとして利用することが現実的であるといえ ます。

表面自由エネルギー接触角計の活用例

PVD・CVD などドライプロセス薄膜コーティングによる基材表面の 低表面自由エネルギー化

  • 金型の離形性向上
  • 自動車部品摺動部の摩擦摩耗性向上

UV・プラズマ照射、光触媒コーティングなどの表面改質による基材表面の 高表面自由エネルギー化

  • 樹脂部品の接着性向上
  • 親水性向上による汚染防止、防曇性向上
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